選手の治療をしていると「治りの悪い選手」というのがいます。
その大半が、使い方のくせであったり、「食事」であったりします。
食事の代表格は、お年頃にありがちな「お菓子」「砂糖」の摂り過ぎだったりするので、ここから注意を促します。
選手の大半は、成長期においての「太りすぎ」を気にします。
たしかに、統計的にみて「隠れ肥満」が多い。
でもこの「隠れ肥満」という言葉だけしか拾わないと大変なことになる。
フィギュアスケーターの食事に関する調査結果をみてみても、野菜を食べる傾向は一般の人よりは多いのだが、菓子パンを食べる率が一般の方と同じという結果はいただけない。おそらく合間に容易に食べられるものだからだろうが、GI値を見ても、栄養価をみてもありえない。
また、よくリンク周辺などでもお菓子のやり取りをしている光景や、練習後のアイスクリームなどをみかけることもある。
これらがカロリーオフ商品であってもリスクしかそこにはない。
栄養が足りなければ食欲は収まらない。適切な食事をしていれば食欲はちゃんと収まる。だからおやつを食べても食事ができたりする。
体重しかみていないと陥る罠がそこにはある。
肥満の指標に使われるスケールの一つにBMIというのがある。スケーターの多くはこれだけみると正常範囲であることがおおいのだが、この正常範囲の 選手の体脂肪率での調査では、女子スケーターは実に60%が軽度肥満傾向以上になるのだ。この調査のスケールが小さかったのもあるが、別の調査を見てみて も、40%以上と結果が出ている。
あいだをとってもスケーターの2人に1人は軽度肥満以上ということです。
あんなに練習しているのに。。。。って思ってしまいますよね。
これと合わせて疲労状況を調べてみると相関していることがわかり、圧倒的に自覚症状としては「ねむい」が多く、80%にも及ぶのである。その次に上がってくる足がだるいというのも食生活調査等を加味したらただただ納得なだけである。
炭水化物や糖類は、血糖のコントロールを乱すから摂取の仕方しだいではねむけもさそうし、炭水化物1gあたり3gの水を抱える性質からしてもむくみやすくはなる。
小学生~中学生は、何を食べても太らないから食べるものにこだわりがない。
中学生~高校生は、カロリーを気にしすぎて栄養には目がいっていない。
写真は「タニタと作る美人の習慣」の著者である細川モモさんが以前に示された軽度の運動をしている10~12歳の子供の理想摂取量(左はおやつ)を視覚化したものです。
フィギュアスケーターのママたちが忙しいことも私はよく知っています。
これを完璧にやってくださいと言っているのではありません。
上にも書いたとおり、運動をしているのに菓子パンを食べる率が一般の方と同じというのがおかしいと気がつくことが大事なんです。
お菓子や菓子パン、砂糖はカルシウムを奪うし、加工食品(インスタント食品など)にはリンが入っていてこれもカルシウムを奪いますし、身体のミネラル分の比率も大きく 崩れます。ミネラルは身体の機能の調整役ですから、現場監督みたいなもんです。この人がいなければ材料が入っても何をどこに配置していいかなんてわからな いんです。そんな感じと思ってください。
これじゃ動きたくても動けないですよね。
さて、ここまで話を進めてきてまとめです。
フィギュアスケーターには隠れ肥満が実は多い。
裏を返せば筋肉量は意外に少ない。鍛えていないのではなく、そもそも筋肉を作るような材料が食事から摂れていないことと、さらに栄養のないものを とっていてそれが結果として体から栄養素を奪ってしまっていることに気がついていない。これはトレーニングをすれば筋肉から必要な栄養素を奪ってしまう状 況なので、筋肉はついていかないどころか、使えなくなります。
そして最大の悩みは気がついていないかもしれないけど・・・・・
隠れ肥満は演技に影響するということ
演技の技術点にも芸術点にも影響するものである。余分な体脂肪の蓄積ではそれこそ音楽に乗った楽な動きや身のこなしができないということなのだ。
よくお笑いで太った方が、ダンスをすること自体をネタにされることもあると思う。それはいわゆる「動けるデブ」であるということをネタにしているの だが、それをみていても「しなやかさ」は感じとれないと思う。どこかぎこちないけど一生懸命に踊っている姿が見ている私たちにとっては「おもしろい」ので ある。
フィギュアスケーターがそれでは困る。
栄養がパフォーマンスに影響するなんて考えたこともないだろうけど、体はとったものでしか作られないし、それに合わせてしか機能しない。
そのあたりを一度しっかり考えてみて欲しいと思うところなので、記事にしてみました。
次回は具体的な体脂肪率のお話をしたいと思います。