中学一年生のバレエ少女です。
つま先を伸ばすとアキレス腱が痛い。つまるような感じがする。
というお悩みでした。
ポワントは10歳から履いていましたが、スタジオではちゃんとポワントを履くためのテストというものがあるそうです。
そもそもの身体の使い方には直すところがありましたが、
痛みが残るところがあり、後方インピンジメントテスト陽性のために一度画像診断をお願いしました。
レントゲンでは三角骨はありましたが、ちょっと気になるところが出ているのでMRIへとすすんでみたところ
下のような画像が・・・・・
一か所真っ黒なところがあるのがわかると思います。
これ、距骨と言われる骨です。
この段階でのドクターの診断は「疲労骨折」もしくは「骨挫傷」とちょっと曖昧でした。
というのもドクターも悩むところだったんです。
以前にもうちから似たような例が2件ほどあり、同じドクターで「希少な症例ありがとう」って連絡がきたほど。
40年も整形外科をやっているドクターですよ。
私も臨床経験は20年ありますが、さすがに最初の2件は
「そもそもここが疲労骨折するのか?」
という印象でした。
私も3例目になると、リサーチをかけたりしますし、共通点がわかったりしてきました。
まず、フィギュアスケーターでこのような例がないことから、バレエ特有のものなのか?と思い、
調べてみましたが見当たらない、ここでDLSの愛さんにもリサーチしてもらったが、
やはり該当がない。
つまり・・・・・
「バレエテクニックでは距骨のこのような骨折は起きない」
ということがまずわかりました。
ドクターにもこの時点で、バレエテクニックでは過去に症例はないとお話をしました。
こういう連携があると、患者を送ったこちらも、送られたドクターも共通認識を持つことができその後の方針を決めやすくなります。
今回は「徹底的に休む」という選択をしました。
そして3か月後のMRIがこちら
ドクターの「合格」の文字が見えると思いますが(笑)
綺麗に白くなっていますよね。
バレエのテクニック的な問題があって疲労骨折したわけではないことが分かったので
徹底的な休養をとることにして、食事の見直しもしました。
本来使われるべき身体のエネルギーがちゃんと成長に使われたということです。
通常ならバレエでもやれることを残したり、トレーニングを入れたりするけど、
それもセーブしました。
3か月ほど、レッスンから離れて長かった髪の毛も切って
学校の友達との交流もあり、
やれなかったことを次々とやっていたようです。
バレエから離れてしまって“戦意喪失状態”にならないかと心配しました。
彼女はこの生活をも楽しんでプラスにしていました。
問題だったのは・・・・・・「オーバーワーク」
バレエは好きでやってましたが、時間を超過してのレッスンが入ったり、
試験勉強があってもレッスンとの両立で頑張りすぎて寝る時間が削られたり・・・・
成長するのに必要なエネルギーがレッスンで奪われてしまった結果、
骨の成長が追い付かなかったというのに気がついたんです。
実際スパッと休んでみて、振り返った時に
あー、あの時あまり寝てなかったなぁ
とか
身体ってこんなに軽くなるんだ
といったものにも気が付いたそうです。疲労があることが普通になってしまうと忘れてしまうんですよね。
また、離れていたことで、やっぱりバレエが好きだなぁってのも思ったそうです。
成長に必要なエネルギーはその子にどれくらい必要かはそれぞれ違います。
彼女の場合、スパっと3か月休んだことが最短の回復をみせたのだと思います。
タイトルが「バレエが原因ではない疲労骨折」となっているのは
バレエテクニックではこの疲労骨折がおきるのではなく、「エネルギー収支」の問題ということです。
このあたりは、大人が主導でいかないと難しくなります。
スポーツの世界(特に卓球)では「寝る時間を削って練習はやらない」が鉄則です。
集中力が切れるし、いいパフォーマンスができないからです。
こういうケースがあるということを知ってもらえればと思います。
また、こういうケースを防ぐためのツールもみつけたのでまた後日紹介したいと思います。
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1ヶ月以内の原因がはっきりしている怪我については保険適応となります。
先生にダメ出しされるけどどう直したらいいかわからない
痛みがずっと続いている・・・などはラボにて
柔軟性と、それをコントロールする力をつけたい