中部地区も邦和杯から新シーズンが始まりました。
この邦和杯も8回目。最初は邦和所属の選手の大会だったのが、
よーく考えたらこの大会の第1回から観戦しています。8回目ですから1回目から出ている子はすっかりお姉さんになってます。
そして、不思議なことにまた初級、1級といった下位のクラスでも
葵に来てくれている子のお名前を見るようになってきました。
時代がめぐっているなぁという印象です。
毎回、残念ながらwithdrawで名前があがる選手が数名います。
いろいろな事情ですが、中には怪我というものが多いでしょうね。
3級以下の選手の故障の多くは、成長と練習量の兼ね合いというより、
ほとんどがスケート靴との問題だと私は思っています。
というのも、圧倒的に「非荷重系」の障害が多く、これは何かしらの牽引力などが働いたことが容易に想像できます。
また、ジュニアあたりから増える疲労骨折においても、「衝撃系」だけでは考えられないからです。
必ず、非荷重+衝撃 という構図があります。
ただし、3級以下とジュニアあたりでは、負傷にいたる構図が少し違ってきます。
3級以下と限定していますが、正確には靴と体重との兼ね合いでみています。
使っている靴が体重の5%を超えるケースは要注意だからです。
先に述べておきますが、軽い方が演技がしやすいとか、そういうお話ではありません。
靴の重さによる「引き抜き損傷」が問題になり、その境界線が体重の5%であるということ。
膝の離断性軟骨炎、骨端性の離開、肉離れなどがみられることがあります。
骨というのは、荷重時にピエゾ効果というのが働きます。
具体的に言うと、骨は荷重のかかっている側にはマイナスの電気を帯びるためにそこにプラスのイオンを持つカルシウムがくっついていきます。
足の外側に体重がのっている子は、膝から下のO脚が進むのでわかりやすいです。
これは一般の方でもみられる現象です。
一方、骨が引っ張られる場合は、プラスの電気を帯びるので、脱灰という現象がおきていきます。
つまり、骨がもろくなりやすいということです。
フィギュアスケーターの場合、5%を超える靴を履いていると、これが起きやすいからです。
とりわけ、遠心力が働きやすい「スピン」が問題になります。
多くの指導者やトレーナーが「ジャンプ」から禁止をしますが、治療の現場からしたらナンセンスです。
事実、ジャンプを禁止してスピンをOKにしている場合、けがの遅延がみられます。
牽引力が働いた状態であれば、骨は脱灰方向に向かってしまいます。
スピンを続けていればこの条件から回復は望めない。
しかも脱灰傾向があれば、そこに衝撃が加われば容易に折れやすいということ。
治らない、折れるはこのあたりを考慮したリハメニューが必要になります。
この現象は、高齢者の「圧迫骨折」でも診られます。
病院勤務時代、圧迫骨折の患者さんを多くみかけましたが、この方たちの特徴は
「立ち上がるときに何かにつかまる癖がある」
ということです。
何かにつかまって立つということは、上半身は上の方向に引き上げられますが、
下半身は残ってしまうので、背骨が引っ張られる状態になります。
こうなると脱灰が起きやすく、その状態から【ドン!】とすわると、その衝撃で椎骨が押しつぶされてしまいます。
もろくなっている条件に衝撃が加わるからですね。
なので、リハでは、たちあがりの訓練をしっかりします。
どの年代でも条件がそろえばおきるものです。
それをフィギュアスケートという競技に当てはめて考えないと治療も競技復帰も上手くいかないのです。
上記のような理由から、葵の選手にはスピンの禁止をよくお話します。
どのようにリハ期間中にスピンを入れ込むのか、またどんなリハが必要なのかなどのお話もしますが、
こればかりは選手一人ひとりに対して違うのでここでは一概にはお話はできません。
また、チームとしてスピンの取り組み方がよいなぁというクラブチームでも故障者はいます。
これもまた個々の問題があるからです。
ただし、疲労骨折があったりしてジャンプはできないけどスピンはいいよね?
というのは「ない」ということだけは理解してもらえればと思います。
最近、フィギュアスケーターを診る治療家やトレーナーさんも増えてきましたが、
なぜかうちに「質問メール」が他院に通院中の選手から来ることもあります。
参考にしてもらえればと思います。
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1ヶ月以内の原因がはっきりしている怪我については保険適応となります。
氷が押せない、身体の軸がぶれる、滑り方がなんかへん・・・などはラボにて
柔軟性と、それをコントロールする力をつけたい