治療家のためのフィギュアスケーター解体新書


木曜日はフィギュアスケーター向けの記事になりますが、

今回は、フィギュアスケーターを診る治療家さん向けのお話。

私自身は2011年に雑誌トレーニングジャーナルで用具と環境を考えるというテーマのフィギュアスケート編で記事を載せてもらっていましたし、2014年にもフィギュアスケーター関連で記事を載せてもらっています。

葵接骨院では、これまでに100名以上のスケーターが来院しています。

これは延べ人数でなく、カルテ枚数です。

毎年開催されるフィギュアスケートバックアップセミナーのDM作成のためにカウントしていますが、100名を超えたあたりからもう何人なのかわからなくなっています。

そんな院だからこそみえてきたものがあり、それを1冊の本にまとめてありますので、よければぜひご購入していただき読んでみてくださいね。→ フィギュアスケーターの治療室から

さて、多くの治療家が思っているフィギュアスケートのイメージがあります。

それは・・・・・・

・フィギュアスケートは前向きに滑るものである

・フィギュアスケートはまっすぐ立って滑るものである。

・女子はトリプルアクセルが跳べるとすごくてそれが最高だと思っている。

・スケート選手は体がやわらかい

 

ひとつづつみていくと

フィギュアスケートは前向きに滑るものである。

たしかに、みなさんが冬になって赤坂サカスや赤レンガ倉庫などにできたリンクに行って滑ると同じ方向でぐるぐる回ると思います。最初がこれなので、イメージが前向きなんですが、テレビの演技をみればわかるのですが、ほとんど前向きで滑ることはありません。ときどき海外の3歳~5歳くらいかなぁってこどもが発表会のようなかんじで滑っているをみると、ほとんどが前向きですが、治療家の先生のところに来る頃には、みなさんそれなりに大会もでているはずですから、間違いなくプログラムのわずかなところでしか前向きは見られないはずです。この目線がないと選手の負傷を見誤ることがあります。

 

フィギュアスケートはまっすぐ立って滑るものである。

これもまた、よくある勘違い。フィギュアスケートの靴にはブレードというものがついていますが、これは氷との接触面が平たいわけではなく、3ミリくらいでまんなかがくぼんでいるかんじで、両端をエッジとよんでいます。このエッジを使い分けて行うのが競技としてのフィギュアスケートです。プログラム中は「フラットはない」くらいでいきます。確かに練習で「ひと蹴りでここまで来てねー!」というのはありますが、何度も言うが、負傷してくるレベルの選手は、この段階は終わっています。ジャンプの着地もフラットということはありません。正しいエッジにのれているかが重要。選手のスケーティングのゴールはこのエッジワークにつながりますので、怪我からの復帰、「滑っていいよー」の合図でまっすぐのスケーティングをイメージしてるとだめなんです。

 

女子はトリプルアクセルが跳べるとすごくてそれが最高だと思っている。

このトリプルアクセルの呪縛というものがよく見られます。そして、ジャンプはすべてトリプルアクセルのように前に跳ぶ方を想像する治療家やトレーナーが多い。ジャンプの種類によっては軸の移動する位置というか作り方も違ってきます。腕の使い方も変わります。また、トリプルアクセルは確かにシングルジャンプとしての得点は高いですが、トリプルアクセルが跳べなくても、別のジャンプでのコンビネーションで高得点をとることは可能です。女子のトリプルアクセルに注目がいってますが、すでに安藤美姫さんが4回転サルコウを跳んでいるのも知られていません。選手の治療の際、その場ジャンプも、どのジャンプイメージなのか、痛みがあったりできないのが、2回転なのか3回転なのかどのジャンプでのトウをついたときなのかなどしっかり問診とらないとこちらの思い込みで治療することになります。

 

スケート選手は体がやわらかい

どんな種目も同じだと思いますが、身体のかたい選手はいます。フィギュアスケーターの中には、踵を浮かせないようにしゃがみ込むことができない選手もいますし、ビールマンができない選手だっています。シットスピンは柔軟性がないとできないわけでなく、そもそも、スケート靴はヒールがありますから踵はあがっているわけです。スケート靴にヒールがあることも忘れている治療家さんは意外に多いのです。インソールもそうです。ヒールのついた靴にいれていることを忘れているのか、うちでもインソールを外すことが今までに何度かあります。今もっている身体の中でできる最高の演技を引き出せるように持っていってください。

 

フィギュアスケーターが治療院にくるというのは、単に痛みをとってもらいたいからくるのではありません。

もし、フィギュアスケーターが、半年もオフシーズンがあってのんびりできる暇があったりしたら、また、現役を辞めてしまったら痛みがあってもきっと治療に来ないと思います。

治療にくるというのは、結局は

「痛みをとってその先にあるベストパフォーマンスをしたいから」

なのです。選手である以上すべては競技でのパーソナルベストが目的や目標なんです。

怪我の治る過程で何が再発のリスクになるかも考えていないと、

「ジャンプはだめだけど、スケーティングとスピンはいいよ」

なんて指示がとぶことがあります。

スピンはいいよ

ないです。これ。(笑) 足におもりが付いた状態で遠心力でなんども振り回されて悪化するものもよくあります。

身体のことは治療家の先生は良く知っていますが、スケートの知識がないために出てしまった指示であること。

身体を治して終わり!という先生ならそれでもいいですが、もし「フィギュアスケーターを診ている」と言われるのであれば、しっかりと競技性はしっていないと選手の治療のゴールに寄り添えないと思います。

私より優秀な先生は世の中に沢山いるので、ぜひともフィギュアスケーターに少しだけ寄り添って頂ければと思います。

また、もし万が一にでも、私が助けられることがあればお気軽に質問してください。

フィギュアスケーターがベストパフォーマンスができるのをお手伝いできれば私はとっても幸せですから。

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